プロローグ
遺産承継業務委託契約の一環として、当事務所が相続不動産の売却の代理人となります。相続した不動産が現物分割に適さない場合は、不動産を売却することで現金化し、その売却代金を各相続人に相続分に応じて分配するなどの方法で円滑な遺産分割が期待できます。
当事務所が不動産売却業務を行うことのメリット
円滑な遺産分割を行うために、相続不動産を現金化したほうが良い場合がありますが、不動産取引には高度な法律知識が必要となる場面も多く、さらに、手続きも専門的なので、一般の方には扱いが難しい面があります。
例えば、相続人自身が高齢者である場合、相続人の居住地が遠方である場合、相続人の人数が多数であるため全員の足並みを揃えるのが困難な場合、相続人自身が煩雑な手続きを処理することが難しい場合などは、当事務所が相続人全員の代理人となり、不動産を売却することで、相続人の時間と労力を省くことができます。
司法書士は、不動産登記や決済立会いを通じて、日常的に不動産取引に関与しており、不動産関連の法律にも精通しています。さらに、不動産業者や税理士その他専門家とのつながりも日常的にありますので、不動産売却を当事務所に委任いただくことは、相続人にとってもメリットのあることだと思います。
当事務所が相続不動産の売却を行う場合は、遺産承継業務委託契約に基づき、相続人の代理人として売却をすることになります。つまり、当事務所は相続人の代理人として相続人の利益ために、法律知識と不動産業界の人脈等を生かしながら、不動産売却業務を行います。
相続不動産の売却ケース
相続不動産を売却するケースとして、次のようなものがあります。
① 被相続人が居住していた空き家を売却するケース
被相続人が単身で暮らしていた古い家屋が相続財産になった場合、その家屋に相続人が住むことを望まないときは、その家屋は空き家になってしまうことがあります。遺言で空き家の相続人が指定されていない場合は、遺産分割をするか相続人共有にするかになります。現物分割にて遺産分割をした場合、分割後の土地面積が小さくなり有効活用ができなくなる等で不利益が生じることもあります。また、相続人の共有にしてしまうと、将来不動産を売却するときに支障をきたす可能性があります。共有不動産を処分(売却や担保権設定)する場合は、共有者全員の合意が必要となりますので、相続人の中に反対する者がいると売却等を行えません。さらに、将来、共有者が死亡し相続が開始すると不動産共有者が増えていき、合意を得ることがどんどん難しくなっていきます。固定資産税は、合意を得られず放置している期間も課税され続けます。このように空き家が相続財産になった場合、空き家を売却して、売却代金を相続人に分配するという選択があります。
② 夫の死亡後、相続人である妻が自宅を売却し、一人暮らし用のマンションを購入したり、有料老人ホームに入所するケース
自宅を相続した場合、自宅不動産を換金し、新しい住居購入などの資金にしたいという需要があります。妻以外に子などの相続人がいる場合は、売却代金の相続分相当額を子に分配します。
③ 相続財産が債務超過に陥っているため、相続不動産を任意売却するケース
④ 清算型遺贈のケース
遺言書に「相続財産である不動産を売却し、受領した代金から各種経費・税金を控除した残金を配偶者と子に2分の1ずつ相続させる。」、または、被相続人に債務がある場合に、「相続財産である不動産を売却し、受領した代金をもって、まずA銀行からの借入金全額を返済し、次に各種経費・税金を控除した残金を配偶者と子に2分の1ずつ相続させる」旨の記載がある場合に、遺言書に従い相続財産を売却します。
⑤ 相続税の納税の資金確保のために不動産を売却するケース
相続不動産の売却業務
相続不動産の売却をするためには、一旦、不動産の所有権登記名義人を被相続人から相続人とする相続登記や遺贈登記をしなければなりません。相続登記をするためには、通常の遺産承継業務委託契約と同様に、相続人の確定(戸籍調査、相続放棄者、欠格該当者、廃除等の調査)、相続財産の確定およびその評価、特別受益や寄与分の存否とその額の確定を経て、遺産分割協議を行い、または法定相続分にて各相続の具体的な相続分を確定させます。
ここでは、遺産分割が終わり各相続人の具体的相続分が確定したことを前提に、相続不動産の売却業務の説明をします。遺産分割までの詳細は、遺産分割協議ページをご覧ください。
① 相続不動産の現況調査および不動産登記記録の調査
不動産の利用状況や占有者の有無等を確認します。また、不動産登記記録において、抵当権等の権利の有無等を確認します。抵当権がある場合は、抵当権を抹消して売却しなければならないので、事前に抵当権者である金融機関との抵当権解除の打ち合わせが必要となります。
② 相続不動産の売却の準備および家財整理
相続不動産の状態によっては売却が困難なことがあるので、売却できるよう対策を含んだ準備をします。また、不動産内にある家財は、廃棄業者等への処分や相続人への形見分けを行います。(装飾品等の資産価値の高い物は、事前の遺産分割協議の対象とします。)
③ 相続不動産の境界線や境界杭の確認
土地の境界線が不明確な場合は、売却前に測量を行い、境界杭の設置をしなければ売却できないときもあります。(売買契約を公募売買とし、事前測量等を不要にできるよう検討することも必要です。)また、接道状況や私道の確認、再建築条件の確認、建物が未登記である場合もあるのでその確認等も併せて行います。
④ 相続不動産の売却価格の査定
近隣地域の実勢価格、公示価格、基準地価格、路線価、実際の売却事例等を参考にします。また、複数の不動産会社へ査定の依頼を行い、価格査定を行います。
⑤ 購入希望者の募集
複数の不動産業者に依頼し、買主を募集します。
⑥ 購入希望者との諸条件の交渉、売買契約書の条項決定、重要事項説明、売買契約の締結
法律専門職である司法書士としてのノウハウを活かしながら売買契約を締結します。
⑦ 売買代金の受領と不動産の引渡し、所有権移転登記
代金決済日において、代金受領と同時に、不動産の引渡しと所有権移転登記を行います。買主からの代金送金は、直接各相続人の銀行口座に相続分に応じて振り込む方法、相続人代表者口座または当事務所口座に一旦入れた後、各相続人に分配する方法などがあります。
相続不動産の売却報酬
売却代金の3%(消費税別)を上限をとし、案件によって個別具体的に算出いたします。
- ※不動産売却業務を行った場合は、遺産承継業務委託契約の報酬以外に、別途、上記報酬を頂戴します。遺産承継業務委託契約についての詳細は、遺産承継業務委託契約をご確認ください。