被相続人は、遺言により、包括的に又は特定の名義で、その相続財産の全部又は一部を処分することができますが、これを遺贈といいます。

遺贈は、遺留分規定に違反すると減殺請求を受ける可能性がありますが、遺留分規定に反していても当然に無効になるものではなく、遺留分規定に反する遺贈を原因とする所有権移転登記であっても申請することができます。

受遺者

遺贈を受ける人を受遺者といい、相続欠格者を除き、誰でも受遺者となることができます(相続人や法人であっても受遺者となれます)。ただし、受遺者は遺言の効力の発生時に生存していなければならず、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、遺贈は効力を生じません。また、遺言者がその遺言に別段の意思表示をしたときを除き、停止条件付き遺贈の条件の成就前に受遺者が死亡したときは、遺贈の効力は生じません。

包括遺贈

包括遺贈は、遺産の全部又は一部について、一定の割合を示して包括的に行う遺贈です。包括受遺者は、相続人と同ーの権利義務を有するため、相続人と共に遺産を共有し、債務も承継します。したがって、遺産分割協議にも参加することになりますし、包括遺贈の承認・放棄をするためには、相続の放棄・承認・限定承認と同じ手続きを行います。ただし、次の点で相続人と異なります。

  • ① 遺留分権がない
  • ② 代襲相続にあたる制度がない
  • ③ 共同相続人が相続放棄をしたり、他の包括受遺者が遺贈放棄をしても、それによって相続分は増えない
  • ④ 包括受遺者の持分は登記しないと第三者に対抗できない
  • ⑤ 法人でも包括受遺者になれる

特定遺贈

特定遺贈は、特定の具体的な財産の遺贈です。たとえば、遺言書に「甲土地をAに遺贈する」と記載します。

遺贈義務者

遺贈義務者は原則として法定相続人全員ですが、包括受遺者や相続財産管理人も遺贈義務者となれます。なお、遺言執行者がいる場合は、遺言執行者がこれらの人に代わって遺贈義務者となります。

登記申請人

遺贈による所有権移転登記は、受遺者を登記権利者、被相続人を登記義務者とする共同申請となりますが、被相続人はすでに死亡していますので、法定相続人全員が登記義務者である被相続人の承継者として申請します。また、遺言書で遺言執行者が指定されている場合や家庭裁判所で遺言執行者の選任がある場合には、遺言執行者と受贈者の共同申請となります。

登録免許税

相続の場合の登録免許税の税率は1000分の4ですが、遺贈の場合の税率は1000分の20となります。ただし、受遺者が相続人であるときは、受遺者が相続人であることを証する書面(戸籍謄本等)を添付すれば税率は1000分の4となります。

遺贈による所有権移転登記の添付書類

<遺言執行者が登記義務者の場合>

  • ① 登記義務者(遺贈者)が当該不動産について所有権の登記をしたときに通知を受けた登記識別情報/登記済証
  • ② 登記原因証明情報として、遺言書と遺贈者の死亡の事実の記載のある戸籍又は除籍の謄抄本
  • ③ 遺言執行者の作成後3ヵ月以内の印鑑証明書
  • ④ 受遺者の住民票の写し又は戸籍の附票の写し
  • ⑤ 遺言執行者の代理権限を証する書面として以下の書類
    • (a) 遺言によって遺言執行者に指定された場合には、遺言書と遺贈者の死亡の事実が記載されている戸籍又は除籍の謄本
    • (b) 家庭裁判所が遺言執行者を選任したときは、その選任を証する審判書の謄本。審判書から当該遺贈する物件が特定できない場合には、遺言書
    • (c) 遺言者が遺言執行者の指定を第三者に委託したときは、遺言書および遺贈者の死亡の事実が記載されている戸籍又は除籍の謄本又は抄本のほかに、第三者が遺言執行者を指定したことを証する書面(印鑑証明書付き)
  • ⑥ 固定資産評価証明書

<相続人全員が登記義務者の場合>

  • ① 登記義務者(遺贈者)が当該不動産について所有権の登記をしたときに通知を受けた登記識別情報/登記済証
  • ② 登記原因証明情報として、遺言書と遺贈者の死亡の事実の記載のある戸籍又は除籍の謄抄本
  • ③ 相続人全員の作成後3ヵ月以内の印鑑証明書
  • ④ 受遺者の住民票の写し又は戸籍の附票の写し
  • ⑤ 相続を証する書類
    • (a) 相続の開始があったことの証明として、被相続人の死亡の事実が記録されている戸籍謄本又は除籍謄本
    • (b) 不動産登記事項証明書の所有者欄に記録されている者と戸籍に記載されている者が同一人物であることの証明として被相続人の戸籍の附票の写し又は住民票の写し等。これらの書面は、登記事項証明書に記録されている被相続人の住所が記載されているものでなければなりません。
    • (c) 他に相続人がいないことの証明として、被相続人に関する戸籍、除籍、改製原戸籍の謄本。被相続人が子供をつくる能力がある年齢(13歳頃)以前に編製された戸籍から現在の戸籍謄本まで
    • (d) 相続人が相続開始時に生存していることおよび相続人の資格を失っていないことの証明として、相続人の戸籍謄抄本。これは、被相続人が死亡した後に発行されたものである必要があります。
    • (e) 相続関係説明図
  • ⑥ 固定資産評価証明書

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