サンプルケース
売買代金決済後すぐに取り壊す予定の建物とその敷地である土地を売買しました。
登記に必要な書類
取壊し予定の建物と土地の売買(建物を取り壊して更地として引き渡す場合)
- < ※所有権移転登記のみの必要書類を記載しています。br> その他の登記、例えば、売主の住所変更、抵当権抹消や買主の抵当権設定登記がある場合は、その登記に応じて別途書類が必要になります。詳しくは登記に必要な書類等一覧をご覧ください。
敷地と建物の取引ケース
敷地と建物の売買には下記の4ケースが考えられます。
① 建物を取り壊して更地として引き渡す場合(イラストのケース)
このケースでは、決済時に更地となっていることが必要なので、売主が売買契約後、代金決済時までに建物を取り壊します。
② 決済時に取り壊し費用や滅失登記費用を売主の負担として精算し、引き渡し後に買主が取り壊す場合
このケースでは、既存の建物を売買の対象とはしないことがほとんどで、取り壊しが確実になされるように売主の名前で買主が取り壊します。
③ 土地と共に建物も売買の対象とし、引渡し後に建物を取り壊す場合
このケースでは、建物も売買対象とし買主に所有権を移転した後で、直ちに取り壊す場合と一定期間存置した後に取り壊す場合があります。
④ 土地と共に建物も売買の対象とし、引渡し後にもその建物を利用する場合
このケースは、通常の敷地と建物の取引なので、建物の取壊しが前提となる本ケースには当たりません。
取り壊しについての確認
まず、前記①~③のどれに当たるのかを確認する必要があります。次に、②③の場合は、建物の所有権移転登記をするのかどうか、又は当面所有権移転登記申請はしないものの必要が生じたときに申請が可能なように書類の準備をしておくべきなのかを確認する必要があります。この点について、売主と買主の認識に誤りがあると売買契約そのものに影響を与えかねない事項なので重要な確認事項です。
売買代金を融資する金融機関等が、たとえ短期間であっても建物に担保権を設定する場合は、建物も売買の対象とし、必ず所有権移転登記申請をする必要があります。
契約書上の記載の確認
既存建物の取扱いは当事者間の事情により様々なので、契約書の記載(建物が売買の対象となっているか、取り壊しを行うのは売主か買主か、その費用は誰が負担するのかなど)につき、売主と買主の認識に誤りがないか十分に確認しておく必要があります。
滅失登記の委任状の準備
建物の取壊しを前提としている取引の場合、滅失登記の委任状を用意し、売主の署名捺印をもらう必要があります。また、登記所によっては、滅失登記の委任状に押印する印鑑は実印とし、印鑑証明書の提出を求められる場合もありますので注意が必要です(登記所によって取扱いが異なります)。なお、売買契約で建物が対象となっているときでも、建物の取壊しを予定していることから、実質的に買主に所有権が移転していないとして、売主の名義のままで滅失登記をすることもあります。いずれの場合も、実際に建物の取壊しが行われ建物が存在していなければ、買主は土地所有権者として登記所に対して建物の滅失登記の申出をすることは可能ですが、手続きとしては売主の滅失登記用の委任状を得ておいた方がスムーズです。