サンプルケース
受益者が、信託不動産の受益権を売却したことにより受益者を変更します。
登記に必要な書類
受益者の変更(信託受益権の売買)
受益権の譲渡と対抗要件
受益権には譲渡性があり、信託契約等による特段の定めがなければ、受益者は受託者の承諾を要することなく受益権を譲渡できます(信託93①)。
そして、信託法94条には、受益権の譲渡は、譲渡人(本ケースではA)が受託者(本ケースでは信託銀行C)に通知をし、又は受託者が承諾をしなければ、受託者その他の第三者に対抗することができず、その通知および承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、受託者以外の第三者に対抗することができないと規定されています。
したがって、受益権の売買に伴う受益者変更の登記は、単に公示のための登記であり、第三者対抗要件ではありません。受益権の買主(本ケースではB)は、受託者その他の第三者に対する対抗要件として、受託者への通知又は承諾を確定日付のある証書で行うことが必要です。
信託目録の確認
信託契約の概要は不動産登記記録の信託目録に記載されていますので、信託目録上の「委託者」「受託者」「受益者」「信託目的」「信託終了の事由」「その他の信託条項」により、受益権売買の契約当事者や信託契約等の別段の定めを確認をします。
登記の申請
受益権売買契約の当事者は売主たる受益者と受益権の買主ですが、登記申請は受託者の単独申請になります。
確定日付の取得
実務上、受益権の譲渡の対抗要件を具備するため、受益権譲渡人が受益権譲渡承諾依頼書兼承諾書を作成し、受託者の承諾を得て、公証役場または法務局で確定日付を取得します。