サンプルケース
株式会社Aは1棟ビル内の4つの区分建物とその敷地利用権として土地持分10万分の4000(敷地権登記はされていない)を所有していました。担保権者B銀行への弁済が滞ったため、B銀行の競売申立てにより4つの区分建物と土地持分10万分の4000に対して差押登記がされています。今回、4つの区分建物のうち1区分建物の売却をすることとなり、その敷地利用権である土地持分10万分の1000も併せて所有権移転することとなりました。B銀行は売買物件についてのみ競売の取下げをすることになりますが、土地の登記記録においては土地持分10万分の4000全体に対して差押登記がなされています。本ケースは、土地持分10万分の4000のうち10万分の1000のみ差押登記を抹消するというケースです。
登記に必要な書類
競売申立が一部取下げられ、差押登記を一部抹消する場合
- ※所有権移転登記のみの必要書類を記載しています。
その他の登記、例えば、売主の住所変更、抵当権抹消や買主の抵当権設定登記がある場合は、その登記に応じて別途書類が必要になります。詳しくは登記に必要な書類等一覧をご覧ください。
上記の変更登記は、土地持分全体(10万分の4000)になされていた差押の一部 (10万分の1000)が抹消されたことを公示しています。変更登記ではありますが、実質的には差押の一部抹消です。不動産登記法には土地持分全体に対する差押の一部だけを抹消するという登記手続が存在しないため、変更登記によって一部抹消であることを表現しています。
また、本ケースのような民間企業が差押の一部を取下げる場合は、まず、B銀行が裁判所に競売申立一部取下書を提出し、それに基づき裁判所が登記嘱託書を作成し登記所に送付します。登記所はその嘱託書に基づいて登記するという流れになります。売買代金の実行前に抹消書類やB銀行が作成した競売申立一部取下書を確認するのはもちろんですが、本ケースは実務上も非常に例が少ないため、事前に裁判所に出向き嘱託書の閲覧をし、さらに登記所とも事前に打ち合わせをした方がよいでしょう。