プロローグ
合同会社の社員が死亡した場合、その持分を相続人に承継させることができます。持分を承継した相続人は、合同会社の社員の地位を承継します。
相続による持分承継の定款の定め
合同会社の持分を相続させるためには、定款に「相続による持分承継の定め」を規定しなければなりません。定款にこの定めがない場合は、死亡した社員の持分を相続人が相続することができません。
① 定款に「相続による持分承継の定め」がない場合
相続による持分承継の定めがない場合は、相続人は死亡した社員の持分を相続することができません。この場合、相続人は、死亡による退社に基づく持分払戻請求権(持分に相当する金銭等の払戻しを請求する権利)を相続するだけです。つまり、相続人は合同会社の持分を相続し、合同会社の社員となることはできず、単に故人の有していた持分に相当する金銭等を受けることしかできません。相続人は、総社員の同意を得て、この持分払戻請求権を出資として、持分会社の社員に加入することができますが、これは持分の承継ではなく、新たな出資をしたことによる新たな持分の取得となります。また、この場合、総社員の同意を得られなければ、社員に加入することはできません。
② 定款に「相続による持分承継の定め」がある場合
下記のような相続による持分承継の定めがある場合は、相続人は、他の社員の同意を得ることなく、死亡した社員の持分を相続することができ、合同会社の社員となることができます。
例)「当会社の社員が死亡した場合には、当該社員の相続人は、持分を承継して社員となることができる。」
相続人が複数いる場合
定款に「相続による持分承継の定め」がある場合においては、①単純承認をして相続人全員が承継する場合、②相続放棄をした者がいる場合、③遺産分割協議を行い承継人を1名にする場合が考えられます。
① 相続人全員が承継する場合
例えば、死亡した社員の相続人がABCの3名の場合で、3名とも単純承認をすると、死亡した社員の持分は、法定相続分に応じてABCに承継されます。この場合、他の社員の同意は不要です。
登記申請としては、戸籍謄本等を添付して、ABCを社員とする相続による社員変更登記を申請します。
② 相続人の中に相続放棄をした者が要る場合
例えば、死亡した社員の相続人がABの2名の場合で、Bが相続放棄をすると、死亡した社員の持分は、Aのみが全部承継します。この場合、他の社員の同意は不要です。
登記申請としては、戸籍謄本、相続放棄申述受理証明書等を添付して、Aを社員とする相続による社員変更登記を申請します。
③ 遺産分割協議を行う場合
例えば、死亡した社員の相続人がABCの3名の場合で、ABC間で遺産分割協議を行い、Aのみが持分を承継することになったときは、Aだけを社員とする相続による社員変更登記を申請することができません。さらに、この場合は、総社員の同意が必要となります。
登記申請としては、まず、死亡した社員の相続人ABCを社員とする相続による社員変更、次に、総社員の同意を得てBCがAに持分を譲渡することで退社、最後に、Aの持分譲り受けによる出資の増額の変更登記申請を行います。